素麺を茹でながら…想う
素麺を茹でていたら、昔のことがふと思い出されました。
それはある女性のこと。
その方は、私が10年くらい前に約3年間担当した利用者さん。
私が担当し始めた時は、ほとんどベッドの生活でした。
ヘルパーさんが毎日自宅に伺い、身の回りの世話をしていました。
90歳くらいでお亡くなりになりました。
ひとり暮らし、生涯独身を通しました。
ある日、私が定期訪問で伺った時
「おなかすいたのよ、素麺つくってくれる?」と。
この方、素麺が大好きで、夏だけでなく一年中、食べていました。
素麺をつくってと言われても、私の本来の仕事は相談援助。
本当はつくれないんですよ、と言いつつも、
おなかがすいたと言う人を見捨てるわけにはいかず、つくりました。
担当していた期間で3、4回つくったと思います。
なにしろ、オールシーズン対応の料理なのでw
小鍋で素麺を茹でて、「このくらいの硬さでどうですか?」と
小皿に数本の素麺を入れて渡すと
指で摘まんですっと口に入れて、「硬すぎるわね、もっとくたくたに煮てちょうだい」
この方の素麺の食べ方は、にゅう麺のようにだし醤油で味付けをしたもの。
こんな感じでどうですか?
再び試食。もっとくたくたにと所望される。
ようやく希望のにゅう麺が出来上がりました。
美味しそうに口に運んでいました。
質素な暮らしぶりでした。
冷蔵庫はいつもスカスカ、
素麺とアンパンしかなかったような台所でした。
おごる気持ちは一切なく、いつもひょうひょうとお話をされていました。
でも時折、結婚を選ばなかった人生について、後悔を口にしていました。
素直な人でした。
ヘルパーさんたちに愛されていました。
素麺を茹でながら、
くたくたに煮てちょうだい
聞こえてきました。

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